HOTEI Signature
G-STAGE
Multi-effects
System

HOTEI Signature
G-STAGE
Multi-effects
System
製品名 HOTEI Signature G-STAGE Multi-effects System
概要 HT-GS001
定価 165,000円(税込)
マニュアル HOTEI Signature G-STAGE Multi-effects System 日本語マニュアル
世界を舞台に活動し続けるロックギタリスト「布袋寅泰」。一聴しただけで「布袋寅泰」のプレイと分かるそのトーンやリズムは、国内外問わず、多くのファンを魅了してきました。「POISON」や「スリル」などのヒットナンバーや映画「キル・ビル」のメインテーマになった「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY」など数々の名曲、伝説のロックバンドBOØWYの楽曲は、今でも世代を問わず多くのファンに愛されプレイし続けられています。
2012年10月 リハーサルスタジオにて
その布袋氏が、この時代だからこそ残したいと考えスタートしたプロジェクトが「G-STAGE」でした。

『自分たちも歳を重ねていくけど変わらないものがある。その時代を奏でた懐かしくも感じるサウンド。俺たちのサウンドを残していきたいんだよね。』

布袋寅泰が皆さんと共有したいサウンドがあります。

フリーザトーンは、布袋寅泰のギターシステムを2005年から担当し、長年、近くでプレイを見てきました。その経験を活かし、「G-STAGE」プロジェクトでは、布袋氏の頭や体に存在するサウンドイメージを具現化する作業を担当しました。
カッティングやリフ、ソロなど「布袋サウンド」の表現に必要なものは、徹底的にチューニングされたアナログのエフェクターです。激しくかき鳴らすワイルドなフレーズから、繊細なタッチで爪弾くフレーズまで、幅広い感情を表現するには、特別なアナログエフェクターが必要でした。特にギターの倍音が重要ですが、多すぎても少なすぎても布袋サウンドは出せません。タッチによって変化する倍音成分をコントロールするために、徹底的にパーツの選定を行いました。電気回路だけでは追い込めないエリアの音質調整です。現在生産されている入手が容易なパーツだけではチューニングが難しく、今回はすでに生産が中止されているNOSパーツを使用し、徹底的にチューニングを行いました。コンプレッサー、リズムOD、ソロODそれぞれの回路に使用されているパーツの一部はNOSパーツです。入手できるパーツの数に制限があるため、限定数生産となってしまいましたが、NOSパーツを使用することで、正に布袋氏が求めるアナログサウンドのエフェクターが完成しました。

「G-STAGE」プロジェクトではライブでの実践的な使用を想定し、ノイズゲートやディレイの開発も行いました。ギターから音を出していないときは、できる限り静かな状態にしたい。ノイズゲートの搭載は、無音も楽曲の一部と考えている布袋氏にとっての願いでした。G-STAGEのノイズゲートは、入力したギター信号を常時CPUがモニタリングしています。ピッキングのニュアンスが損なわれないように、入力したギターの信号レベルに応じて、ノイズゲートの動作を瞬時に調整します。
G-STAGE用に開発したディレイには、「バンビーナ」、「CLOUDY HEART」、「MARIONETTE」や「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY」などで使用されるディレイタイムを組み込んだ3つのプリセットが内蔵されています。ディレイタイムだけでなく、使用される曲のイメージを考慮し、ディレイの音色もそれぞれ細かく調整されています。わずらわしい細かな設定は必要ありません。すぐに使用することができます。
そして、「G-STAGE」には、飛び道具的エフェクト効果の「FLASH」機能を搭載しました。アナログディレイの発振音をさらに進化させたエフェクト音です。使いやすく高性能な「G-STAGE」に遊び心を取り入れようとした布袋寅泰ならではの、ユニークなアイデアです。

これまで何度も布袋氏と試作品をテストし、約5年に渡る開発期間を経て、遂に「HOTEI Signature G-STAGE Multi-effects System」が完成しました。共同作業の結晶とも言える「G-STAGE」でギターをかき鳴らし、ギターを弾く楽しさを十分に味わってください。40年以上、ファンを魅了してきた「布袋サウンド」を、皆様に楽しんでいただけることを心から願っています。

<NOSパーツ(NEW OLD STOCK品)とは>
製造が終了した未使用在庫品のパーツをNOSパーツ(NEW OLD STOCK)と言います。
今回、G-STAGE使用したNOSパーツは貴重で入手が困難です。NOSパーツを製品に採用した場合、補修用にパーツを確保しておく必要があります。結果的に生産できる数が限定されることになってしまいますが、妥協せずに追い込んだG-STAGEのサウンドを、ユーザーの皆様が楽しんでいただけることを願っております。
G-STAGEフロントパネル
G-STAGEリアパネル

機能紹介

  • DIRECT/PRESETモード
本製品はフットスイッチで個別にエフェクターのON/OFFを行うDIRECTモードと、予めプリセットしたエフェクターの組み合わせをフットスイッチで呼び出すPRESETモードの2つのモードがあります。

  • COMPRESSOR
強くコンプレッサーをかけるとアタックが抑えられサスティンが伸びますが、少し音が引っ込む傾向になります。本製品ではDRY MIXノブが搭載されており、エフェクト音にドライ音を足すことで、音の粒が立ち、カッティング時のスピード感を保ちつつ、コンプ特有のうねりを生み出すことができます。

  • RHYTHM OVERDRIVE
バッキング用のオーバードライブです。布袋氏の音色は独特で、あまり歪んでいないにも関わらず豊かなドライブサウンドで、かつ各弦の響きが感じられるのが特徴です。布袋氏はキレのあるフレーズが多いので、不要な低音域が出ないように調整を行っています。

  • SOLO OVERDRIVE
ソロ用のオーバードライブです。
RHYTHM OVERDRIVEのサウンドの延長線にあり、かつサスティンが十分あるソロ用オーバードライブです。布袋氏のソロを弾く際の伸びやかで太い音が出るよう調整を行っています。

  • NOISE GATE
ディレイの回路にできるだけノイズ成分を入力しないようにノイズゲートは、ディレイの直前に配置しています。ピックアップが拾ってしまうノイズ成分が多い音がディレイ回路に入力されると、ノイズ成分にもディレイがかかり、サウンドが濁ってしまいます。できる限り不要なノイズを抑え、布袋氏のギタープレイの表現を邪魔しないようにするためです。NOISE GATEは個別のエフェクター「INTEGRATED GATE / IG-1N」として発売しています。機能や性能の詳細はコチラでご確認ください。

  • DELAY
SHORT、MIDDLE、LONGの3つのプリセットがあります。全てのプリセットのディレイサウンドは細かく調整してあり、周波数特性が異なります。また複数のフィルターエフェクトをかけ、音が重なった時に原音に馴染むよう調整を行なっています。

  • FLASH
ディレイのリピート音に複数のフィルタリング処理を行い、徐々にサウンドが変化していく発振音を出力します。布袋氏がライブで使用しているアナログディレイの発振音を解析し、FLASH機能の開発を行いました。FLASHのON/OFFはG-STAGEと付属のEXTERNAL FOOTSWITCHを接続して行うか、リアパネルFLASH端子にモーメンタリー(アンラッチ)タイプの外部フットスイッチを接続して行ないます。

  • EXTERNAL FOOTSWITCH
G-STAGE専用の拡張フットスイッチです。G-STAGEとEXTERNAL FOOTSWITCHを付属のDIN 7 Pin接続ケーブルで接続する事により、設定された機能をフットスイッチにより操作を行うことができます。
本製品には布袋寅泰氏本人直筆のサインが入った認定証が付属します。

G-STAGE開発ヒストリー

はじめに

この「G-STAGE」プロジェクトは、約5年に渡って行われました。途中、誰もが想像しなかったコロナ禍を経験し、予期せぬ開発の中断もありました。サウンドのチューニングが完了し、完成が見えた後にパーツが入手できなくなる不測の事態も起こりました。数多くのトラブルを乗り越え、ようやく完成した「G-STAGE」を手にされる方と、この経験を共有したいと思います。ぜひ、最後までお付き合いください。

共同プロジェクト「G-STAGE」開始

2019年にスタートした布袋さんとフリーザトーンの共同プロジェクト「G-STAGE」。それは布袋さんのアイデアから始まりました。「機材がどんどんデジタル化して進化しているけど、時が経過しても変わらない懐かしさも感じるようなサウンド。僕の音を残していきたいんだよね。」 
布袋さんのサウンドを出すための、そして残すための機材を設計することが私にできるのか?自問自答は続きましたが、学生時代、BOØWYのコピーバンドをやっていた私にとって夢のような話です。自分を試したい気持ちもあって、このプロジェクトに参加することにしました。

布袋さんとの出会い

2005年8月 ピートコーニッシュシステム納品時、リハーサルスタジオにて
布袋さんと初めてお会いしたのが2004年。ピートコーニッシュのギターシステム製作のご依頼があり、初めてお会いしました。かなり大掛かりなシステムのため、メインのアナログ部はピートコーニッシュが製作し、私はMIDI制御などのデジタルコントロール部を担当することになりました。このギターシステムは2005年に完成し、今でも布袋さんのライブで使用されています。興味のある方は、ぜひフリーザトーンWEB SITEのアーティストページから布袋さんのステージ機材写真をチェックしてみてください。

このギターシステムがきっかけで、布袋さんのギターシステムを担当することになった私は、SONIC DRIVEやSILKY COMPなどアナログエフェクターを設計開発し、布袋さんのシステムで使用していただけるまでになりました。今では、FT-2Y/FLIGHT TIME(デジタルディレイ) 、PA-1QG(10 band EQ) なども使用していただいています。

アナログのマルチエフェクターとして開発スタート

はじめに布袋さんから「ライブで使うことを考えると、コンプ、バッキング用のオーバードライブ、ソロ用のディストーションがあれば良いよね。」とお話があって、3つのエフェクターを一つにまとめたアイデアからスタートしました。ところが共同作業を進めていくうちに、布袋さんと私の構想はどんどん広がっていきます。(笑)
3つのアナログエフェクターを一つにまとめた最初期のデザイン案

COMPRESSOR

マルチエフェクターに組み込むコンプレッサーは、当時開発中だったSILKY GROOVEを布袋さんに提案しました。SILKY GOOVEの良さは、コンプレッサーのかかったサウンドにコンプレッサーのかかっていないドライ音が足せるところです。強くコンプレッサーをかけるとアタックが抑えられサスティンが伸びますが、少し音が引っ込む傾向になります。コンプレッサーの回路は、SILKY COMPをベースにし、ドライ音を足せる回路を追加しました。DRY MIXノブを左に回し切った状態で、ドライ音が無くなります。右に回していくにしたがいドライ音が足されていきます。少しドライ音を足すことで、音の粒が立ち、カッティング時のスピード感を保ちつつ、コンプ特有のうねりを生み出すことができます。コンプをONした状態とOFFにした状態で比較した時、コンプOFFだと何か寂しい感じになると思います。

RHYTHM OVERDRIVE

リズムODの試作品。右側に低音域のゲインを変更するスイッチを用意し、布袋さんの好みのサウンドを確認しました。
布袋さんのリズム用オーバードライブの音色は独特で、あまり歪んでいないにも関わらず豊かなドライブサウンドで、かつ各弦の響きが感じられるのが特徴です。キレのあるフレーズが多いので、ボワついた不要な低音域が出ないように調整を行っています。
今まで布袋さんに製作したオーバードライブは、TONEノブ1つで音色を調整する回路を採用することが多かったのですが、最終的には細かな音色の調整を可能にするため、新たにトレブルとベースのEQ回路を追加しました。HOTEIモデルやテレキャスター、ストラトキャスターなど、特性が異なるギターを使用したときでも高音域と低音域の調整がしやすくなります。

そしてこのリズムODのサウンドの要はパーツの選定です。電気的特性がほぼ同じパーツであっても、素材、サイズ、構造などによって、そのパーツが持つ音色というものがあります。ギターのシールドケーブルを変えると音が変化するのと同様に、パーツを変えると音が変化します。この変化を利用してサウンドの追い込みを行うのですが、パーツの組み合わせは果てしなく存在するため、これまでの経験をベースにパーツの選定をしていきます。リズムODのサウンドを最終形に追い込むため、結果的に1年半かかりました。現在、生産されているパーツを使用し試作を繰り返しましたが、どうしても不要な倍音が発生してしまい、布袋さんは気になるだろうなという音が出ていました。不要な倍音を削るために、イコライザーでカットすると、必要な音までカットされてしまいます。イコライザーで調整できる部分ではないのです。回路変更で行える調整を完了した後、禁断のNOSパーツ(NEW OLD STOCK品)に手を出す決意をしました。NOSパーツは新品ですが、生産されてからある程度の時間が経過しているので、製造日を確認した上でテストに合格したものを製品に使用します。使用されている素材や製造工場(製造場所)の違いなどが影響し、同じパーツ型番であっても微妙に音色が異なります。ワインやウイスキーに近いかもしれませんね。NOSパーツを何種類も購入し、G-STAGEのリズムオーバードライブにマッチしたサウンドが出るまで、パーツ交換とヒアリングテストを繰り返しました。そして今回、サウンドの決め手となったのは、NOSパーツの半導体。これを使用することで、不要な倍音成分を抑えながらも、豊かでキレのあるドライブサウンドに仕上げることができました。
布袋さんが弾いたとたん、「これは俺のサウンドだね!」と言ってくれたので、心の中でガッツポーズをしました!

SOLO OVERDRIVE

ソロODの試作品です。リズムOD同様に低音域のゲインを変更できるスイッチを用意しました。
ソロODは、リズムODよりさらに開発に時間がかかりました。約2年はかかったと思います。リズムODのサウンドの延長線にあり、かつサスティンが十分あるリードトーンをイメージしましたが、そこに到達するには困難を極めました。私のようなアマチュアギタープレイヤーであっても、布袋さんのように伸びやかな気持ちの良いソロプレイがしたいわけです。倍音成分を豊かにすればするほど、音に太さが生まれサスティンも豊かになります。ところがこの倍音成分はいつも良いわけではなく、ピッキングやフレーズやポジショニングによって耳に痛い倍音が生まれたり、音が潰れたように聞こえたり、不協和音を生じたりと、デメリットの部分もあります。ある程度のコントロールが必要なわけです。いつもはS/Nを良くするために(ノイズレベルを減らすために)回路の最適化を行なっていましたが、今回はノイズ成分の力を借りるために最適化は行わず、回路から発生している「サー」というノイズとオーバードライブしたギターの音が混じった時に、気持ちよく感じることができるように回路を調整しました。最初に回路を調整したソロODは、音の重心が下に下がっていたため、布袋さんから「重心をもう少し上に上げて欲しい」というリクエストがありました。太い音にすることばかりに頭が行きすぎて、音質調整が上手くいかなかった失敗事例ですが、布袋さんが求めているソロのサウンドをより知ることができました。
試作品にはゲイン調整ノブをつけて、布袋さんの好みの設定を確認しました。
リズムODと同様にソロODにおいてもNOSパーツを使ってサウンドの最終調整を行いました。面白いことに、リズムODで使用したNOSパーツを使っても上手くいかず、結局別のNOSパーツを使うことになりました。ソロODは回路のゲインが高いため、ピークの周波数成分が強調されやすくなり耳に痛い音になってしまいます。ピーク成分を抑えながら、ピッキングのニュアンスが失われないように、サウンドの調整を行いました。

<NOSパーツについて>
今回、G-STAGE使用したNOSパーツは貴重で入手が困難です。NOSパーツを製品に採用した場合、補修用にパーツを確保しておく必要もあります。結果的に生産できる数が限定されることになってしまいますが、妥協せずに追い込んだG-STAGEのサウンドを、ユーザーの皆様が楽しんでいただけることを願っております。

DELAY

今回、困難を極めた開発項目が多いのですが、一番苦労したのがディレイの開発です。皆様がご存知の通り、布袋さんは曲のテンポに合わせたオンテンポのディレイタイムを使いません。曲に馴染む、ギタートーンに馴染むディレイサウンドが必要です。布袋さんはライブでFREE THE TONE/FLIGH TIME(デジタルディレイ)を使用しています。FLIGHT TIMEにはローカットフィルターやハイカットフィルターなどのイコライザー機能やモジュレーション機能など豊富な機能が備わっていて、ディレイサウンドを細かく調整することができますが、このFLIGHT TIMEはサイズが大きく、小型化したいG-STAGEには入りません。当時、開発中であったCOMSIC WAVE(デジタルディレイ)の回路を生かして、新たに開発をすることになりました。

途中まで開発は順調でしたが、デジタルディレイに使用する重要なパーツを生産している会社の工場で火災が発生し、使用する予定であったパーツが入手できなくなってしまいました。この事態は深刻で、デジタルディレイの心臓部の一部が入手できなくなってしまったのです。新たに入手できるパーツを調査し、今回のG-STAGEにマッチするパーツをやっと見つけることができました。これだけで半年以上費やすことになってしまいました。パーツの選定は、これほど大変で時間がかかる作業なのです。

このパーツの問題を解決したあとは、試作機を製作し、延々とディレイのパラメーターの編集作業を行いました。G-STAGEに組み込まれているディレイサウンドは、ぱっと聴き分からないかもしれませんが、SHORT、MIDDLE、LONG、全てのプリセットのディレイサウンドは細かく調整してあり、周波数特性が異なります。また複数のフィルターエフェクトをかけ、音が重なった時に原音に馴染むよう調整を行なっています。一日中この作業を行うとヘトヘトになりますので(笑)、一日、3時間から4時間が限界です。納得できるまで、この作業を繰り返し行いました。

3つのディレイプリセット

「ライブを想定すると、シンプルで良いから3種類あると便利だよね。」と布袋さんからご要望があり、SHORT、MIDDLE、LONGのディレイプリセットを用意することになったのですが、ディレイタイムについては、布袋さんならではのお話を伺うことができました。布袋さんは曲のテンポのBPMに合わせてディレイタイムを設定しません。あえてディレイタイムをずらして設定するという話を聞いたのち、実際に音を出して聴かせていただくと、なるほど!ディレイ音が良い感じでフレーズにマッチしているのを実感しました。特にMIDDLEに設定している358msecのディレイは、布袋さんが使用する頻度が高いディレイタイムです。「CLOUDY HEART」や「MARIONETTE」で使われているディレイタイムもこの358msecだったことを知り、フレーズをコピーしても、何かが違うなと思っていた学生時代の自分に教えたい気持ちでいっぱいでした(笑)ディレイはフレーズの音と音の重なりを生みますので、ディレイタイムを知ることは非常に重要だと思います。
使用頻度の高いMIDDLE以外のSHORTは、「バンビーナ」やロカビリー風の曲をプレイするためのショートディレイです。LONGは、「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY」や「FLY INTO YOUR DREAM」などで使用されているロングディレイです。この3つのディレイプリセットが入っていることで、即戦力になること間違い無しです!

FLASH(旧称DM FEEDBACK)

製品ではFLASHとネーミングされていますが、名前が付いていない開発段階では、DM FEEDBACKと呼んでいました。布袋さんがライブで使用しているBOSS/DM-3の発振音のことをDM FEEDBACKと勝手に名前を付けて呼んでいたのですが、このDM-3の発振音に近いサウンドで、且つこれを超えるサウンドを目指しました。布袋さんがG-STAGEに何か遊び心を入れたいということから決まったこのFLASH機能ですが、本当に大変でした(汗)。
布袋さんはDM-3でギター音を発振させ、これ以上発振させるとやばいと感じる寸前で発振を止めるわけですが、アナログディレイならではのサウンドがあり、リピートを繰り返すたびに音が変化していく特性があります。変化の具合は、個体によって異なるのが曲者でした。私もDM-3を1台入手しましたが、布袋さんのような効果を得ることができません。そこでもう2台追加購入したのですが、どれもサウンドが異なることに気づきました。これでは、永遠に布袋さんのサウンドに近づくことができないと思い、布袋さんが使用しているDM-3をお借りしサウンドチェックを行いました。色々調べていくうちに、布袋さんの所有しているDM-3は1.3kHz付近をピークに、その他の周波数帯が変化していく特性を持っていて、独特の危ないニュアンスを持ったフィードバックサウンドを生み出していることがわかったのです。フィルタリング機能をディレイに組み込み、布袋さんのDM-3のサウンドに近づけたサウンドと、他の周波数をピークに変化していくサウンドを聴き比べていただきました。ピークを1.3kHz付近に設定したサウンドが、布袋さんらしいサウンドであることを発見し、布袋さんにすごく喜んでいただきました。
このFLASH機能はDM-3のサウンドをそのままコピーしたわけではありません。布袋さんに何度もチェックしていただきながらサウンドを調整し、理想とするサウンドに近づけています。良くも悪くも無機質なデジタルディレイと、良くも悪くもサウンドが変化していくアナログディレイ、それぞれの良い所を融合した新たなサウンドを生み出すことができたのではないかと自負しております。

この機能はG-STAGEの特別な機能なので、名前を付けようということになりました。私も色々考えたのですが、これといって良い名前が浮かばず、しばらくして布袋さんから「FLASH」という案が来ました。まさにFLASH!このエフェクト効果にピッタリの名前です。ファンの方もこれで、「リピートするあの音」とか「DM-3で発振させる音」とかいう必要がなくなります(笑) FLASHです!

マルチエフェクターとして使いやすくするには(仕様)

コンプ、2種類のオーバードライブ、ディレイを個々に試作した後、次のステップは全てを合体させる設計です。手書きのイラストをご覧ください。これまでに何度も書き直していますが、最初の試作品を作るために考えた仕様です。
手書きの仕様案
フットスイッチの右側にある四角いパーツがDIPスイッチです。
マニュアルが無くても使えるくらい簡単な仕様が理想的です。フットスイッチ一つ踏めば、簡単に複数のエフェクターが同時に切り替わる方法として、DIPスイッチと呼ばれる小型の4つのスライドスイッチが組み合わさったパーツを採用しました。4つのスイッチ、それぞれにエフェクターを割り当て、スイッチを上に上げておけば、そのエフェクターがオンになるように設定しておくのです。例えば、SOLO DELAYのフットスイッチの場所は、ソロODとDELAYがONになるようにDIPスイッチを設定します。COMPもさらに入れたい場合は、追加でCOMPが割り当てられたDIPスイッチを上に上げるだけです。簡単に組み合わせを設定することができます。製品では布袋さんが使用する通りにあらかじめ設定されていますが、ユーザーの方の好みに合わせて、設定が変えられるようになっています。例えば、一番右端のフットスイッチにCLEANサウンドを割り当てても大丈夫です。

また自由に個々のエフェクターのON/OFFができるモードも用意しました。個別のエフェクターを直列に配線して、使いたいエフェクターのフットスイッチを直接踏んでON/OFFするのと同じ方法です。この時の動作モードを「ダイレクトモード」と言います。ダイレクトに個々のエフェクターをON/OFFするのでダイレクトモードと名付けました。前述の、DIPスイッチでエフェクターのON/OFFをあらかじめ設定して使用する動作モードは「プリセットモード」と言います。お好みで動作モードを使い分けていただければと思います。

最初の試作機完成

最初の試作機
試作品の内部です。小型化するため、3段の基板構成になっています。
内部の回路はぎっしりなのですが、なんとか小型化に成功し、横幅270cmの筐体に収めることができました。手に持ってみると、結構ずっしりです。4つのエフェクターのサウンド調整を行い、スタジオに持ち込みました。布袋さんに時間をかけて全機能のチェックをしていただきました。それぞれのエフェクターのサウンドのチェック。プリセットモードとダイレクトモードのチェック。そして操作性のチェック。小型化しすぎたため、フットスイッチとフットスイッチの間隔が狭く、布袋さんが素早く操作した際、足が意図しないフットスイッチに触れてしまい、操作がしづらいということが分かりました。サイズは小さい方が良いですが、操作性はもっと重要です。特に布袋さんは歌いながらギターをプレイしますので、フットスイッチを見ないで操作することもあります。相談した結果、布袋さんがメインシステムで使用しているカスタムMIDIペダルに合わせたフットスイッチの間隔にすることになりました。これなら、いつも同じ感覚でフットスイッチを操作することができます。

エフェクターの並びとサイズを変更

エフェクターの並びを変え、さらにノイズゲート(ノイズリダクション)を加えたイラスト
時間をかけて試作品をチェックした後、布袋さんはエフェクターの並びが気になると考え込んでいました。例えば一番左側のCLEANのフットスイッチを踏むとコンプがONになる設定になっています。このコンプを調整するとき、踏んだフットスイッチの上ではなく、一番遠い右側のコンプのノブを調整しなければなりません。この位置関係が布袋さんにとって使い辛さを生じる原因となっていました。一般的にエフェクターは、ケースの右側に信号の入力、左側に出力があります。その構造のためエフェクターを複数使用するときは、右側から左側にエフェクターを並べて接続していくのが慣例になっています。試作品もこれにならって配置をしました。しかし、そこはさすが布袋さんです。慣例に囚われることなく、使い勝手が良く、直感的に操作できることを優先しました。エフェクターの並びを逆にし、クリーンのフットスイッチの上にはCOMP、RHYTHMのフットスイッチの上にはRHYTHM OD、SOLOの上にはSOLO OD、SOLO DELAYのフットスイッチの上にDELAYを配置することになったのです。この後、ノイズゲートが加わるため、フットスイッチの真上にそれぞれのエフェクターが配置されていませんが、エフェクターの信号の流れは本体の左から右へと流れることになりました。

ノイズゲートのアイデア

ある日、布袋さんからノイズゲートの話が出ました。「ノイズが嫌いなんだよねー。ノイズゲートが入っていたらいいな。組み込めなかったら外付けでも良いから用意したいな。」と。実は当時、フリーザトーンでノイズゲートを開発中だったのですが、まだ布袋さんにチェックしていただけるレベルではありませんでした。商品化できるかどうかも分からない状況だったので、「頑張ってやってみますが、できなかったらすみません!」とお伝えしてノイズゲートの開発に取り組みました。
その後、ツアーのリハーサルに合わせて試作機を完成させ、布袋さんのメインシステムに接続してチェックしていただきました。布袋さんがニコッとして「ノイズゲートが一番好きなエフェクターかもしれない。良いねー(笑)」と。このノイズゲートは商品化に成功し、FREE THE TONEのINTEGRATED GATE/IG-1Nとして発売されています。
G-STAGEに組み込まれたノイズゲートは、ディレイの直前に配置されています。ディレイの回路にできるだけノイズ成分を入力しないようにするためです。ピックアップが拾ってしまうノイズ成分が多いサウンドがディレイ回路に入力されると、ノイズ成分にもディレイがかかり、サウンドが濁ってしまいます。できる限り不要なノイズを抑え、布袋さんのギタープレイの表現を邪魔しないようにするため、この位置を選択しました。

インサート回路の提案

例えばBOØWYの曲を演奏するとき、コーラスをかけたくなることがあると思います。コーラスをかけるとしたらオーバードライブの後にかけたいのですが、現在の仕様ではディレイの後か、コンプの前にコーラスを接続するしかありません。これでは、布袋さんのギターフレーズをコピーしにくいなと思った私は、思い切って布袋さんにインサート回路(外部機器を接続するための端子)をSOLO ODとディレイの間に入れることを提案しました。それは良い案だねと、布袋さんも賛成してくれました。インサート回路があると、ボリュームペダルを繋いだりオクターバーやハーモナイザーを繋いだりと、楽しみ方が増えます。さらにインサートに接続したエフェクターのノイズも消したいと考えましたので、ノイズゲートはインサートの後に配置するようにしました。これで、インサートに接続したエフェクターから発生する「サー」というノイズにも対応できます。

デザインの追求

布袋さんから届いたG柄入りのスケッチ(イメージ原案)
布袋さんはサウンドだけでなくデザインも重視しました。布袋さんから届いたG柄が入った手書きのイラストを受け取った時、思わず「おおっ」と声が出ました。この原案を元に、筐体の最終レイアウトに合わせ、イメージそのままにG柄のパターンが具体的に製品に落とし込まれていくのを目の当たりにし、いたく感銘を受けました。
種類の異なる試作ノブを取り付けて比較
そしてコントロールノブも、「既製品のノブを付けるのではなく、オリジナルのノブを作りたいな」と布袋さんからアイデアが出ました。G-STAGEのデザインにマッチした特別なノブを生み出す過程は、かなり大変でした。ノブは回しやすく、視認性が良いことが望まれます。艶有り、艶無し、マット仕上げなど本当に多くのノブを試作し、細部を詰めていきました。選ばれたノブは、マット仕上げで視認性が良く、ポインターと呼ばれるノブの位置が分かるように入った細い線は、レーザーで削り出し加工を行い入れています。非常に手間のかかる作業ですが、このノブのおかげでグッと高級感が出て、シックな雰囲気を持つようになったと思います。是非このノブもじっくり見ていただけたらと思います。

エクスターナルフットスイッチの提案

試作のフットスイッチ
DELAYのON/OFF、ディレイプリセットの切り替え、FLASH機能は、一般的に販売されているアンラッチタイプのフットスイッチに対応するように設計し、フットスイッチが接続できるようにジャックを用意しておく方向で検討をしていました。使用する方にはお好みのフットスイッチを別途購入していただき使っていただこうと考えていましたが、開発が進みG-STAGEの動作チェックしているうちに、専用のフットスイッチがあった方が絶対使いやすいと感じてきました。パッとディレイのON/OFFができたら使いやすいですし、FLASH機能はフットスイッチを買って接続しないと使えないというのは不親切です。早速、試作品を作り、布袋さんに試していただきました。布袋さんは軽やかに操作し、「小さくて良いね!」とOKをいただきました。操作した時のスイッチの安定性を確認するため、重量の異なる試作品も同時に準備しました。安定性が良く、かつ持ち運びを考え、できるだけ軽量の物を選択しました。

最終調整

最終調整用に用意したHOTEIモデル (Zodiac TE-Hotei)
音質調整のために準備した様々なIC(OPアンプ)
布袋さんに完成品を試していただく前にサウンドの微調整が必要で、どうしてもHOTEIモデルが必要になりました。なんとか手を尽くしてZodiac TE-Hoteiを用意し、最後の調整に入りました。この段階では、生産する製品に使われるパーツを必ず使用します。もちろんハンダも同じ物を使用します。ユーザーの方に届けられる製品と、布袋さんがチェックする試作品が同じでなければ意味がないからです。
また最終調整では、プロギタリストの黒田晃年さんにご協力いただきました。長年、布袋さんと一緒にプレイしている黒田さんは、布袋さんの生の音を知っています。ギタリストならではのサウンドの捉え方で、じっくりチェックをしながらアドバイスをいただきました。ICでいっぱいになったトレイからひとつずつICを取り出し、交換をしながらサウンドチェックする作業にも長時間付き合っていただき、本当に助かりました。この場をお借りして黒田さんに御礼申し上げます。
この黒田さんとの共同作業で、布袋さんの音を出すために必要なエッセンスをG-STAGEに取り込むことができました。

最後に

布袋さんが約5年もかけて取り組んだG-STAGEプロジェクト。このG-STAGEに布袋さんの想いがぎっしり詰まっています。ギターを弾く楽しさ、ライブの楽しさを共有できたらという想いがひしひしと感じられました。私も技術者として、かつ布袋さんのファンとして、G-STAGEに向き合ってきました。G-STAGEは、使えば使うほど発見があると思います。フレーズを変えれば、出てくる音の表情も変わって行きます。ギターサウンドの深さを知るきっかけになるかもしれません。ギターでなければ表現できないことがいっぱいあります。
このG-STAGEで「布袋サウンド」を楽しんでいただけることを心から願っています。

フリーザトーン代表 林 幸宏
 
 

ご購入に関して

本製品は下記のご購入窓口にてご注文を受付し、販売期間/台数限定の受注生産(最大300台)をいたします。

オフィシャルファンクラブbeat crazy(Sold out)

https://www.beatcrazy.net/posts/pages/mavpqo

先行販売期間:終了
(予定販売数に達したため、先行販売は終了いたしました。ご了承ください。 )
発送開始予定日:2023年6月下旬から順次発送予定
※個数制限:お一人様につき、1点までの注文とさせていただきます。

FREE THE TONE WEBSITEでの販売方法変更のご案内

当初、「FREE THE TONE WEBSITE」での販売方法は、先着(数量限定)販売を予定しておりましたが、抽選での販売方法へ変更することとなりました。今回の販売方法変更の理由としては、G-STAGEの反響が予想を大きく上回り、先着(数量限定)販売を行った場合「FREE THE TONE WEBSITE」で使用しているサーバーの処理能力を上回るアクセスが予想され、サーバーがダウンする可能性が大きくなったためです。告知後の変更となり誠に申し訳ございませんが、何卒ご理解のほど賜りたく存じます。
なお、「イケベウェブサイト・オンラインストア」での販売(先着)については変更ございません。

FREE THE TONE WEBSITE(Sold out)

応募期間:終了
当選発表:7月3日(月)18:00
内金入金期間:7月3日(月)18:00〜7月10日(月)23:55まで
発送開始予定日:2023年9月下旬〜10月初旬から順次発送予定
※個数制限:お一人様につき、1点までのお申込みとさせていただきます
※購入に関するその他詳細はFREE THE TONEへご確認ください

イケベウェブサイト・オンラインストア(Sold out)

先行販売期間:終了
※オンラインストアでの販売
※限定数(20台)に到達次第、販売終了となります
発送開始予定日: 2023年7月下旬から順次発送予定
※個数制限: お一人様につき、1点までの注文とさせていただきます
※購入に関するその他詳細は株式会社池部楽器店アンプステーションへご確認ください
WEB:https://www.ikebe-gakki-pb.com/new_product/?p=147555
*ご購入のお問い合わせに関して
お申し込みいただいた上記各窓口までお願いいたします。

仕様

入力インピーダンス 1MΩ
出力負荷インピーダンス 10kΩ以上
端子 1/4インチ標準フォーン・ジャック(入力、出力、ディレイ用コントロール端子x 3)、DIN 7 Pinコネクター(EXTERNAL FOOTSWTICH接続用)、DC9V入力ジャック(専用ACアダプター接続用)
電源 DC9V 専用ACアダプター(FA-W0905D-JA)
消費電流 230mA
サイズ G-STAGE本体:103(D) × 320(W) × 51(H)mm (フットスイッチやジャック等の突起物含む)
EXTERNAL FOOTSWITCH:42(D) × 170(W) × 45(H)mm (フットスイッチやジャック等の突起物含む)
重量 G-STAGE本体:約1.2kg
EXTERNAL FOOTSWITCH:約270g
付属品 認定証、保証書、取扱説明書、専用ACアダプター(FA-W0905-JA)、DIN 7 Pin接続ケーブル、ピック、ゴム足x8
※規格および外観、付属品は改良のため予告なく変更する場合があります。

SUPPORT